イルカのボキャブラリー

イルカのコミュニケーション

 

イルカ

イルカを展示している現場では、新しいイルカが入ってきたら、すぐに他のイルカの水槽へ入れることはしません。まず、閉鎖空間に慣れてもらわねばならないこと、人間は敵ではないこと、人間は楽しい仲間で、自分たちと同様に娯楽を楽しむ生き物であることなどを理解させます。

とにかく、快適に生活し、楽しい気持ちを与えるとことは、今後の調教をスムースに行うことに貢献するからです。多くのイルカは複数の芸をその日に覚えるそうです。楽しいという気持ちがなければ自ら進んでやることはないですから。

 

十分、閉鎖環境になれたら、新しいイルカを他のイルカと混泳させます。やはり同じ生き物ですからすぐに合流するそうです。そこで、いつも起こることに、ジャンプや、プールサイドへの顔出しをいつの間にか習得していることです。明らかに、他のイルカが教えているのです。「顔出し」なんかは自然界にはない行動です。

 

イルカは、「音」と「態度」でコミュニケーションを行っています。
イルカの出す音は声帯の振動によるものではありません。別の方法で出しています。その音を発声する目的は通信、探査です。音は大気中と水中では随分違った伝播をします。著しく減衰が少ないので遠くまで届きますし、伝播速度はおよそマッハ4.4です。つまり、水中では、音による通信は大気中より有効です。イルカが通信に使用する音を「ホイッスル音」と呼びます。この音は人間の可聴範囲を超えている部分もありますが、彼らからヒトに合図(オネダリ)するときは、ヒトの可聴範囲で話してくれます。

 

古い観察ですが、飼っているイルカの水槽に休憩時間、つまりイルカの自由時間にマイクで声を集めた結果、30分間で数百種類の異なった音を録音しています。研究では、イルカが持つ語彙は500以上あることが分かっています。また、この声は群れごとに違っていることも知られています。方言があるのです。さらに、群れの「メス」の一部は群れから離れて別の群れで交配することがあります。近親交配を避けるための自然の本能です。そのメスは「バイリンガル」であることも分かっています。

 

ここまでで、イルカはその知性を社会生活の維持に使用し、文化を伝承していることがわかります。文化があると言えるのは、イルカが使う群れごとに違った語彙の存在が示しています。ヒトにはイルカの言語体系が理解しにくいはずです。手足や指があるのではないので、伝達すべきことは食べるため、繁殖のため、危険伝達のために使われるのでしょう。